会社員から独立して驚くことの一つが、国民健康保険料(国保)の高さです。会社員時代は会社が半分負担していた健康保険料を、個人事業主は全額自分で払うことになるからです。
この記事では、国民健康保険料がどう決まるのかを整理したうえで、保険料を抑えるために「効く対策」と「実は効かない対策」を解説します。
国民健康保険料はどう決まる?
国民健康保険料は、市区町村ごとに計算方法や料率が違いますが、おおまかには次の組み合わせで決まります。
- 所得割:前年の所得に応じてかかる部分(保険料の大部分)
- 均等割:加入者1人あたりにかかる部分
- 平等割:1世帯あたりにかかる部分(ない自治体もある)
所得割の計算のもとになるのは、多くの自治体で「前年の総所得金額等から基礎控除(43万円)を引いた金額」です。ポイントは、所得税と違って、社会保険料控除や生命保険料控除などの所得控除のほとんどが反映されないことです。
【効く対策】国保の保険料を下げる方法
1. 経費を漏れなく計上する
所得=売上−経費なので、経費が増えれば所得割の計算のもとになる金額も下がります。家事按分を含めて、事業に必要な支出を漏れなく記録しましょう(→「個人事業主の経費にできるもの一覧」)。
2. 青色申告特別控除を受ける
青色申告特別控除(最大65万円)は、事業所得そのものを減らす控除なので、国保の保険料にも反映されます。65万円控除を受けられるかどうかで、所得税・住民税だけでなく国保も変わります(→「青色申告承認申請書の書き方」)。
3. 軽減・減免制度を確認する
所得が一定以下の世帯は、均等割・平等割が7割・5割・2割軽減される制度があります(届出なしで適用されるのが一般的ですが、所得の申告が必要)。また、会社の倒産や解雇などで離職した人には、保険料を軽減する制度があります。災害や大幅な収入減少のときに使える減免制度を設けている自治体もあります。
所得がない年でも、確定申告(または住民税の申告)をしておかないと軽減が受けられないことがあるので注意しましょう(→「はじめての確定申告」)。
4. 国民健康保険組合(国保組合)を検討する
特定の業種(文芸・美術・著述業、建設業、医師、理美容業など)には、業種ごとの国民健康保険組合があります。保険料が所得にかかわらず定額などの仕組みの組合もあり、所得が多い人は安くなることがあります。加入条件は組合ごとに違うので確認しましょう。
5. 退職後2年間は任意継続と比べる
退職直後は、前年の会社員時代の所得をもとに国保が計算されるため、高くなりがちです。会社の健康保険を最長2年間続けられる「任意継続」と比べて、安いほうを選びましょう(→「独立前にやることリスト」)。
6. 法人化して社会保険に加入する
利益が大きくなってきたら、法人化して役員報酬を設定し、社会保険(健康保険・厚生年金)に加入する方法もあります。保険料は役員報酬をもとに決まるため、報酬の設定次第で負担が変わります。ただし、厚生年金も含めると負担が増えることもあるので、税理士などに試算してもらいましょう(→「法人化(会社設立)の手順」)。
所得が大きくなってきたら、法人を作って社会保険に加入する方法もあります(→「マイクロ法人とは?」)。
【実は効かない対策】国保は下がらないもの
| 対策 | 所得税・住民税 | 国民健康保険料 |
|---|---|---|
| 小規模企業共済の掛金 | 下がる(全額所得控除) | 原則として下がらない |
| iDeCoの掛金 | 下がる(全額所得控除) | 原則として下がらない |
| 生命保険料控除 | 下がる | 下がらない |
| ふるさと納税 | 実質負担2,000円で税金が控除される | 下がらない |
| 経費の計上・青色申告特別控除 | 下がる | 下がる |
小規模企業共済やiDeCoは、税金を減らしながら老後資金を準備できる優れた制度ですが、国保の保険料を下げる目的では効果がない点に注意しましょう。
国民健康保険料のよくある質問
Q. 開業1年目の保険料が高いのはなぜ?
国民健康保険料は前年の所得で計算されます。会社員を辞めて開業した年は、会社員時代の給与をもとに計算されるため、収入が減っていても保険料が高くなりがちです。退職直後は、任意継続や家族の扶養と比べてから加入先を決めましょう(→「退職前にやることリスト」)。
Q. 保険料を払えないときは?
滞納すると延滞金がかかり、保険証の有効期限が短くなるなどの不利益があります。払えないときは放置せず、市区町村の窓口に分割納付や減免を相談しましょう。災害や事業の休廃止、所得の大幅な減少などで減免を受けられる場合があります。
Q. 家族の扶養に入ることはできる?
配偶者などが会社の健康保険に加入していれば、収入が一定以下なら扶養に入れる場合があります。個人事業主の収入の判定方法(売上か所得か)は健康保険組合によって違うので、事前に確認が必要です。
保険料を抑える第一歩は「正しい帳簿づけ」
国保の保険料を左右するのは、確定申告で申告した所得です。経費の計上漏れを防ぎ、青色申告の65万円控除を確実に受けるためにも、日々の記録を会計ソフトで正確につけておくことが、最もベーシックで効果の大きい対策です。
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※国民健康保険料の計算方法・軽減制度は市区町村によって異なります。具体的な金額や制度は、お住まいの市区町村の窓口・ホームページでご確認ください。


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